オンボーディング Onboarding 「新卒社員」や「中途社員」が辞めない仕組みづくり
『オンボーディング』とは、新入社員をスムーズに社内に溶け込ませ、パフォーマンスを上げさせるための一連の仕組みづくりを言います。この冊子ではHR先進国であるアメリカ企業の事例も踏まえ、人材育成のための最新のメソッドを解説。
オンボーディングの具体的な取り組み方をご紹介しています。
HRの基本
公開日:2021.6.15
新卒、中途採用に限らず、採用した人材が“入社直前にドタキャン”となるトラブルは少なくありません。その結果、企業側は大きな損失を被ることになります。加えて、その理由がわからないことから対策が打てない企業も少なくありません。では、なぜ入社のタイミングでドタキャンが起こるのでしょうか。その原因を探り、企業として取るべき対策を探っていきましょう。
転職市場は、2019年までであれば休職者に有利な状況でした。しかし、2020年のコロナウイルスの感染拡大を受けて求人数は一時的に減少し、現在は回復傾向にあるという状況です。そのような状況であっても、入社辞退とドタキャンは起こりえます。
実際、内定後の入社辞退が増えているという採用担当者の声を聴く機会は増えています。新卒のみならず、中途採用においても、こうした入社辞退の問題はついて回ります。採用担当者は、通年で入社辞退の問題と向き合う必要があるのです。
複数の企業に手あたり次第応募して、内定が決まってから真剣に入社を考える求職者も多いといえます。他にも採用面接のドタキャンや入社日に新入社員が出社せず、そのまま連絡が取れなくなるという最悪のケースもあります。
採用者が入社辞退する理由は以下のようなものです。
一方、入社日に何の連絡もなく出社しないケースは「出社日を忘れていた」「入社辞退を決めたものの、会社側にどう伝えればいいか分からなかった」などの理由があります。面接だけでなく、入社日でもドタキャンの理由は変わらないといえるでしょう。
内定辞退・入社辞退は、就業者の自由として認められているものです。企業側は、そのリスクを理解して採用活動しなければなりません。入社辞退者が出た場合に企業側にはどんなデメリットが生じるのでしょうか。
最大のデメリットは、採用にかかったコスト、労力が無駄になる点です。たとえば、以下のような労力が全て無駄になってしまいます。
関係者一同の精神的なダメージも少なくありません。
また、新入社員が何らかのプロジェクトに参加予定だった場合は、その後の業務が停滞してしまう可能性もあります。事業計画に大きな問題が生じることもあるでしょう。人事部や採用担当者は、新たな人材の確保が急務となったうえで、時には関係先への対応も必要となります。
注意点として、コスト面のみを気にして辞退を希望する相手に入社を無理強いするべきではありません。早期退職につながるためです。内定辞退、入社辞退の申し入れがあったときは、相手の事情をしっかりヒアリングしたうえで、今後に役立てるようにしましょう。企業側の事情を押し付けるのではなく、悪質な場合をのぞいて大きなトラブルにならないように解決策を探します。
辞退者が将来的に自社のサービスや商品の利用者になる場合や取引先の担当者になるケースもあるでしょう。たとえ入社を辞退されたとしても、自社のファンになってもらえるような丁寧な対応をすることが長い目で見て会社のためになるといえます。
入社辞退やドタキャンを防ぐための絶対的な仕掛けはありませんが、様々な施策によってその確率を下げることは可能です。
1.応募書類の文章を分析する
応募書類への「志望動機の記載」を必須にしましょう。手間が増える分応募者数は減りますが、給与や待遇以外のやりがいや将来性にフォーカスできるため、辞退率は確実に下がります。「内定をもらってから入社するかどうか考える」という求職者からの応募を避けることもできるでしょう。企業と求職者のミスマッチも減ります。
2.具体的な質問にしっかりと応える
採用活動中は、休職者側の質問に可能な限り正直に答えましょう。悩みに寄り添うことで「一緒に成長できる会社」という印象を伝えられます。休職者からの不安点をなくすことができ、自社の良い部分だけでなく現在の課題も包み隠さず伝えることが、「希望の職種ではなかった」という理由で辞退されるのを防ぐ。社内見学や、採用担当者以外の社員と交流できる機会を設けて、自社の実情を知ってもらうのも有効です。
3.スピーディーな選考
選考をスピーディーに行うことも、入社辞退の確率を下げる効果を生みます。「一番早く内定が決まった」という事実のみで、求職者の印象は格段にアップします。求職者側の手間を考えて、手書きの履歴書をやめてウェブ履歴書を活用してもらったり、面接回数を減らしたりするのも、自社の印象アップにつながります。入社辞退が多い会社は、採用フローの見直しや求職者へのアプローチ方法などを見直す必要があるでしょう。
4.内定後のフォローが充実している
内定後のフォローも大切な要素です。入社を決意した理由を内定者に尋ね、その分野を強調するようなフォロー策を講じていきましょう。ただし、連絡は夜分や土日を避けるのが基本です。「休みの日も稼働しているブラック企業なのでは」と思われないようにする工夫が大切です。
マナーとして、会社側からの電話やメールなどの言葉遣いにも注意が必要です。担当者の対応が横柄だったり、メールに誤字脱字が多かったりすると「この会社は大丈夫か?」という不安が生じ、入社辞退を考えるきっかけになりかねません。
入社辞退理由として「悪い噂を聞いた」という声があることを考慮するなら、ネット上の噂やクチコミのチェックも重要です。すでに対応済みの問題が、いまだに悪い噂として広まっている場合は、メディアや自社ウェブサイト、SNSなどで情報を発信し、PR活動に力を入れる必要があります。
また、面接直前や入社日直前に、会社側から電話連絡を入れるだけで、ドタキャンの可能性は下がります。入社辞退をぎりぎりまで悩んでいる相手には、期待を伝えるのも効果的です。そのひとことで、入社の意思が固まる場合もあるでしょう。連絡時に辞退の申し入れをされる場合があっても、当日の混乱を避けられる点はメリットだといえます。
内定辞退や入社のドタキャンは、会社側に大きなダメージをもたらします。残念な事態になったとしても、ネガティブに捉えず「まだまだ改善の余地がある!」とポジティブに受け止め、次なる教訓としていくべきです。様々な対策のなかから、何が自社に必要なのか見定めて体制強化に努めていきましょう。
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