オンボーディング Onboarding 「新卒社員」や「中途社員」が辞めない仕組みづくり
『オンボーディング』とは、新入社員をスムーズに社内に溶け込ませ、パフォーマンスを上げさせるための一連の仕組みづくりを言います。この冊子ではHR先進国であるアメリカ企業の事例も踏まえ、人材育成のための最新のメソッドを解説。
オンボーディングの具体的な取り組み方をご紹介しています。
HRの基本
公開日:2021.1.13
HR Techをご存知ですか?HR TechとはX‐Tech(クロステック)の一つとされ、近年注目を集めている分野です。HR Techという言葉は聞いたことがある、人事分野であることは知っているといった人は多いでしょう。しかし、正確な内容や期待されていることについて知っている人は多くありません。そこで今回はHR Techについてその内容を解説していきます。
目次
そもそもTechとは「Technology」の省略で、主に革新的な技術進化が期待できるときに付けられます。前述のX‐Techとは何らか(X)の分野に技術革命が期待できるという意味となり、金融(Finace)のFintech(フィンテック)や農業(Agriculture)のAgritech(アグリテック)といった、多くの種類が存在します。HR Techも例にもれず、このX-Techに含まれます。
ではHR Techは、主にどのようなシーンで使われるのでしょうか。HRとは人事分野における総称として使われる言葉であり、広く人事戦略や人事部を指す言葉。そのため、HR Techは一般的に人事分野の革新的な技術進化を指す言葉として使われています。人事分野においてはHRシステムと呼ばれる、人事部をサポートするシステムの導入が進められ、その多くは技術を集めて複合的につくられたシステム。そしてその技術の個別進化が、HRシステム全体に大きな影響を与えます。HR TechとはHRに関連する技術であり、今まさに急激に進化し注目されています。
HR Techは主に3つの分野が関連しており、それぞれの進化に密接に関係しています。その3つの分野について確認します。
HR Techと密接に関係する研究分野は下記の3つです。
HR Techを用いたHRシステムにはAIが使用されています。多くの場合、HRシステムは集めた情報を元に判断を下すシステム。その判断にAIが持つ自己学習という技術を用いて、AI自体が下した判断を評価することで次回以降の判断の精度を高めるという仕組みです。このため、AIの研究が進むことで判断精度は向上し、近い将来、より正確な判断が下せるようになると期待されています。
ビッグデータとは、一般的なコンピューターでは扱うことすらできない大容量のデータの総称であり、元々は必要とされていないデータも含まれています。しかし、情報爆発となった現代では、不要とされていた情報も、組み合わせることで価値を見いだせるようになりました。そのため、膨大なデータを扱うことが必須となり、ビッグデータ解析の研究が行われています。このビッグデータ解析によってAIが判断する際の情報量が増加し、より正確な判断を下すことができるようになります。一見関係ないように見えるデータも実際には大きな役割があるといったケースもあるため、HR Techに含まれています。
IoT(Internet of Things)は、モノのインターネットと称され、すべてのモノがインターネットにつながるという技術です。昔はインターネットにつながるのはコンピューターのみとされていて、すべての情報の送受信にコンピューターを用いていました。しかし、電子端末の小型化が進んだ現代では多くのものでインターネットが使用可能。代表例としてスマートフォン・リモコン・電化製品などがあり、最近では猫の首輪までインターネットにつながるものがあります。このIoTによって多くの情報が収集可能となりました。それまではPCにつながっている情報しか集められなかったため、AIの判断に足りない情報があることは一般的でしたが、このIoTによって新たな情報を集めることが可能となり、より正確な判断を下せるようになったといえます。
これら3つの分野がHR Techに関連する分野とされ、今後さらに進化することは必要不可欠です。
HR Techに期待されることは人事分野における正確性の高い判断です。人間の不完全さを補うために作られてきたものが計算機。コンピューターの始まりはその計算機でした。そのため、当初コンピューターは判断を下すものではなく、計算をおこない判断を補助するものでしかなかったのです。コンピューターが判断を下すことになったのは、冷戦下における宇宙開発競争が発端とされています。宇宙開発の技術進化において、各国が長距離かつ正確性の高いミサイル発射技術を得ました。この際にミサイル防衛問題が発生しました。当然、ミサイル発射情報を確認してから対応を決める時間などはないため、各国は観測直後に自動で迎撃するシステムを考案したのです。このころから瞬間的な判断は人間よりコンピューターのほうが優れていると、AIによる判断が進化・発展していきました。
HR Techに求められているのは、コンピューター特有の正確で合理性の高い人事的判断です。そのためには正確性をどのように評価するかも重要なポイントになります。HR Techにおいては基準を元に正確な判断を定義していますが、実際には常にそのとおりであるとは限りません。HR Techの進化にはこの正確性の定義を見直す必要を含め、いまだ不明瞭な部分もあります。近い将来、より実践的な使用に向けてさらに進化するであろうHR Tech。しかし、そこに期待するものを我々が自ら理解していないと、システム自体の意味がなくなってしまうかもしれません。
最後にHR Techが生み出す技術の活用法について解説していきます。実際に企業で導入するとどのようなメリットが生まれるか、その具体例をあげながら確認していきます。
1つ目の活用法は人事部門の業務の効率化です。HR Techによって技術が進化することで、近い将来、AIによる人事部門の意思決定が可能となります。具体的には従業員の採用・配置・評価といったものから、企業戦略に応じた採用計画の策定まで、さまざまな作業を担えるとされています。これまで人が手がけてきた部分の大半をAIが行ううため、人材の削減や別業務への従事が期待できます。
さらに人事部門以外にも、企業に対する問い合わせやアポイントの管理など、今までコールセンターや秘書といった職種が担当していた業務もAIでの代行が可能に。企業リソースの削減効果が期待できると期待されています。
2つ目の活用法は、従業員に合わせた能力開発です。HR Techには効率化以外にも多くの情報を管理できるという機能があります。これはAIの学習進化に役立ちますが、同時に従業員の能力開発にも有効です。以前なら知ることができなかった従業員の適性や個性といった情報を、ビッグデータ解析やIoTで知ることが可能となったからです。これまでは本人の実績やキャリア志向を一人ひとり確認し、会社側が能力開発を決めることが基本でした。しかし、HR Techによって扱える情報量は増加し、過去のキャリア志向や上司部下との組み合わせによる作業効率の変化といった、新しい情報を元に判断が可能となりました。
今後、企業という枠組みで働く人間は減少し、個別のスキルを提供するフリーランスな働き方が増加すると言われています。そのなかでは過去の実績を客観的に評価し、多くの情報を同時に扱えることは重要とされています。時代の変革にあわせた進化を期待できるHR Techの活用は、企業にとって大変重要となります。
3つ目の活用法は主観や偏見を取り除いた判断です。人間は完璧な判断を下すことが難しく、その判断には必ず主観や偏見が含まれます。これはバイアスと呼ばれ、バイアスの方向性によっては大きな損失を招くことがあります。企業によってはバイアスは派閥や花形部署といった、属性として現れることも多いようです。このバイアスを持たないことがAIの大きなメリットとされています。
バイアスは意識的に作用するときと、深層心理に働きかけ無意識に作用するときがあります。後者の無意識に作用するケースは本人さえも意識ができないため、回避することが困難とされています。バイアスを避けて判断を下す必要があるとき、AIの活用は大きなメリットとなります。
企業における代表的なものとして3つの活用法をあげましたが、HR Techに期待されている活用法はまだまだ存在します。今後の進化にあわせて自社で活用法を考えることも重要です。
今記事ではHR Techの意義と活用法について解説してきました。HR Techは今なお、日々進化を続けています。そして、その進化に遅れを取らないためには、企業として事前に有益な活用方法を考えることが重要なのです。
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