オンボーディング Onboarding 「新卒社員」や「中途社員」が辞めない仕組みづくり
『オンボーディング』とは、新入社員をスムーズに社内に溶け込ませ、パフォーマンスを上げさせるための一連の仕組みづくりを言います。この冊子ではHR先進国であるアメリカ企業の事例も踏まえ、人材育成のための最新のメソッドを解説。
オンボーディングの具体的な取り組み方をご紹介しています。
HRの基本
公開日:2021.8.4
従業員満足度を重視した会社経営をしていたとしても、社員のモチベーションが上がらないと悩む方もいるでしょう。こういった場合は、社員を取り巻く「衛生要因」「動機づけ要因」の違いを理解し、異なるアプローチで問題解決していく必要があります。
本記事では、仕事の満足度の要素となる衛生・動機づけ要因についてみていきましょう。
アメリカの臨床心理学者フレデリック・ハーズバーグは「仕事における満足と不満足は、まったく異なる要因によって生じている」とする“二要因理論”を提唱しました。
ハーズバーグは、「不満足につながるのは給与や福利厚生、職場の安全性といった、社員の仕事環境に関する要因だと説き、それらを「衛生要因(Hygiene Factors)」と呼んでいます。
それと同時に、「関心が仕事そのものに向き、やりがいや達成感があるときに人は満足感を覚えると説明し、前向きな感情につながる要因」を「動機づけ要因(Motivation Factors)」と呼びました。
衛生要因は、社員にとっては「保証されてあたり前のもの」です。そのため、少しでも物足りなさを感じると不満の声となる点と、解消されたとしても社員の前向きな行動を促すことにはつながらない点を把握しておきましょう。社員のやる気を高め、積極性や自律性を育むためには、動機づけ要因を充実させる必要があります。
一般的には、従業員満足度を高めることが生産性向上や業績アップにつながると考えられています。しかし実際には、社内の衛生要因を満たしながら、同時に動機づけ要因を意識するという二段構えの施策による業務設計が重要です。
社員の不満につながる衛生要因と満足につながる動機づけ要因とは、具体的にどのようなものなのでしょうか。代表的な項目を挙げていきましょう。
【衛生要因】
・会社の方針
・管理体制
・組織の成り立ち
・人間関係
・施設や設備の使いやすさ
・仕事の安全性
・給与
・福利厚生
衛生要因は「整備されていないと不満が出る項目」と言い替えることができるでしょう。また、衛生要因が満たされていれば、不満を感じる理由がなくなるため、モチベーションがゼロ以下になるのを防ぐ効果が期待できます。ただし、どれだけ満たしてもモチベーションアップにはつながりません。
次に動機づけ要因をみていきましょう。
【動機づけ要因】
・仕事内容
・達成感
・周囲からの承認
・責任
・裁量
・昇格
・自己成長
動機づけ要因は「感じられないからといって、すぐさま不満が出るわけではない項目」だと言えます。しかし、これらが満たされたとき、人は効力感を覚え、進んで会社に貢献しようとするようになると考えられます。現状を超える業績を目指すのであれば、動機づけ要因を充実させることが大切です。
従業員満足度を高めるために、給与アップや休暇などといった衛生要因の拡充を図るケースもあるでしょう。しかし、それで不満の声が減ったとしても一時的な効果でしかありません。改善後の状況に慣れれば、「もっと」という要求の声が上がるためです。
一方で、自分の企画が採用された、周囲から評価された、目標を達成できたといった出来事は、自信やモチベーションアップにつながります。衛生要因にいくらかの不満があったとしても、「自分は貢献できている」と感じられれば、社員のやる気を引き出せるでしょう。
会社を成長させ、業績をアップさせるためには、衛生要因と動機づけ要因の違いを理解し、組み合わせながら仕事の設計をしていく必要があります。
どんなにやりがいがある仕事でも、給与が低く、安全性に問題があれば、社員は生活や健康のために離職を選ぶ結果となります。逆に、給与が高く、安心して働ける職場だったとしても、やりがいのある仕事でなければ優秀な社員ほど転職してしまうでしょう。
企業の業績を現状よりアップさせるには、動機づけ要因の拡充が不可欠です。しかし衛生要因が満たされていない状態では、動機づけ要因をいくら満たしても社員のモチベーションは思うように上がりません。そのため、状況を改善する際には、まず衛生要因を満たし、その後に動機づけ要因を充実させていくのが現実的な手順です。
社員の離職に関するリサーチで「人間関係に問題があった」という理由は、常に上位に入っています。「人間関係」は衛生要因です。自社の成長戦略を軌道に乗せるためには社内の人間関係の良化から始めてみるのも悪くないでしょう。
また、「給与が低くてもやりがいのある仕事を選ぶ」というタイプの社員にとっても、一定の衛生要因が満たされていることが重要です。違う見方をすると、衛生要因が納得できる水準に達していれば、動機づけ要因の方が重要であるとも考えられます。いかにして、衛生要因と動機づけ要因のバランスを取るかが、働きやすい会社と働きにくい会社を分ける鍵になるといえるでしょう。
社員が感じる不満と満足は、それぞれ異なる理由に起因しています。不満の原因となる衛生要因と、満足につながる動機づけ要因の違いを理解し、適切なバランスを取りながら業務設計を行いながら、社員にとって働きやすい職場を実現していきましょう。そうすれば必然的に業績アップにもつながります。
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