かつて雇用には、「正社員」と「アルバイト」の2種類くらいしかありませんでした。しかし現代では直接雇用や間接雇用、正規や非正規などさまざまなカタチがあり、労働者自身が求める暮らしや将来の目標に合わせて選ぶものになってきました。
人材派遣業を主軸に、人材紹介や採用コンサルティングなどを手がける株式会社キャスティングロード(以下、キャスティングロード)は、2021年に設立20年を迎え、長年培ってきたその実績とノウハウを活かし、ハイキャリア層に向けた紹介なども行っています。誰もが生き生きと働ける豊かな社会を目指し、何よりも人を大切にしているからこそ、同社では一般的に使われる「派遣社員」「派遣スタッフ」という呼び名を使っていないそうです。配された場でその力を発揮する人材として、「キャスト」と呼び、外部の人材ではなく仲間として考えるという文化が根付いています。
そうした人材第一主義の企業風土があっても、離職防止やエンゲージメントの向上はキャスティングロードにとって大きな課題となっていたそうです。そこで同社が課題解決のために導入を検討したのは人材の評価や育成を効率的におこなうHRシステム。その導入経緯や社内で起こった変化について、社内で人材開発を担当している業務管理部の早瀬仁洋さんと松山佳代さんにお話しをお聞きしました。
目次
企業成長と共に人が離れてしまう負の連鎖を断ち切るために、課題解決方法を模索
弊社では人材ビジネスを行うという業種的に、労働基準法や派遣法などの法令や保険関係の知識を幅広く身に付けておく必要がありました。それらは法改正も多く、社内で知識の均一化を図るためにも、コロナ禍以前の4年ほど前から社内版ウィキペディアのようなポータルサイトを構築し、運用していました。そこに社内掲示板のような機能も加え、コミュニケーションツールとして活用していたのです。
しかし、会社が成長して全国に支店が増えていくにつれ、人の管理が難しくなっていきました。特に物理的に距離が離れた支店などは、一人ひとりに目が行き届かないことが増えてきたのです。さらにコロナ禍でそれまで行ってきた社員総会や全社的な行事が減り、コミュニケーションがどうしても希薄になってしまいました。入社したばかりの従業員ではなく、長く勤めていた役職を持つ人材が会社を離れてしまったり、社内の雰囲気や発言にネガティブなものが増えてしまったりと改善していかなくてはならない部分が増え、「エンゲージメントの向上に力を入れていかなくてはならない」と考えていたのです。そんな時に知ったのがあるHRシステムでした。
管理から育成、コミュニケーションの場としてオールマイティに使える利便性
エンゲージメント向上の方法を模索していた時、弊社代表と交流のあった株式会社アックスコンサルティングの代表に紹介いただいたのが『MotifyHR』というHRシステムです。1on1ミーティングなどエンゲージメントに欠かせない機能をはじめ、私たちが取り入れたい内容が網羅されており、価格的にもトライしやすいものでした。スモールスタートを考えていた私たちにはぴったりだったのです。従業員のモチベーション向上や帰属意識の醸成に期待が持てると導入を決めました。
実際に運用を始めると、それまで法令関係や社内のフローをまとめていた社内のポータルサイトは、管理者のみが投稿できる『MotifyHR』の情報共有掲示板であるカンパニーボードを活用することでスムーズに移行でき、紙ベースで行っていた体調管理などもシステムで対応できるなど、便利さを実感。それまでのポータルサイトではWordPressを使用していたのですが、自由度が高いというメリットがあるものの、詳しい従業員がいなかったため使いづらい部分の改善が難しく、運用も大変でした。その点『MotifyHR』はシステムの機能をそのまま使えて大変助かりました。
また、コロナ禍で体調管理がより重要になっていたため、毎日の体調を簡単なスタンプで報告ができる体調管理機能は、報告する本人が便利なだけでなく、周りが声をかけるきっかけにもなりました。表情のスタンプは体調だけでなく、メンタル的な変化を感じ取れるのもよいですね。1on1ミーティングは基本的に月に1回行うように指導しています。もちろんできない場合もありますが、それも含めてシステムで確認・管理しています。
さらに、以前のポータルサイトは社内のパソコンからしかアクセスできませんでしたが、導入した『MotifyHR』はアプリ版もあるため、社外でスマートフォンからも確認でき、現場を回る従業員にはとても便利です。従業員機能のタグを使うと離れた拠点や会ったことがない相手でも顔と名前が一致し、趣味やスキルで検索が可能になるため、使用範囲が広がります。
人材管理や育成、そしてコミュニケーションまで、このシステムだけで完結できるというのが大変使いやすいです。
導入後の現場の変化や新たな動きから効果を実感
システムのアカウントを発行しているのは正社員と内勤のアルバイト、出向中の一部従業員ですが、かなり多くの従業員がシステムを活用してくれています。また、使っていない場合は上司から積極的に声掛けするなどし、社内全体でまずはログインするという習慣が付いてきたようです。ニュースフィードへの投稿は平均して1日に2~3件、多い日には5~6件ある日もあります。ポップアップでその都度通知されるため自然とチェックでき、写真も投稿できるため他部門や各支店の様子がわかったり、親近感が増したりと、社内全体のコミュニケーションに自然とつながっています。
ただ、投稿の内容について配慮が必要だと考えています。新型コロナウイルスによる行動規制は減ってきましたが、まだまだ油断はできません。特に弊社のように多くの人が関わる業種では集団感染などを回避することが大変重要なので、社内イベントの投稿などにも細心の注意を払っていく必要があります。ただ、投稿するかどうかの判断は人によって温度差があるものです。そのため、各個人が投稿する際には業務管理部が内容を確認し、まとめて行うようにしています。そうした仕組みを作りやすいのもシステムを使うメリットです。
また、業務以外でシステムの活用が見えるようになってきたのも嬉しい効果です。名古屋と福岡の支店の従業員たちが有志で集まってあるゲームをオンラインで対戦するなど、同じ趣味を持つ従業員同士で業務外でのコミュニケーションもできるようになりました。こうしてシステムを通じて他部門のことを知るようになったことで、お客様への提案の幅も広がってきたように思います。自社や従業員に興味を持つことで、より互いを理解できるようになることが大事だと考えています。
導入後の離職率について、入ったばかりの従業員については導入前と比較して7%減少し、全体的に改善されてきています。これはシステムとさまざまな施策の相乗効果と言えるでしょう。
さらに使いやすさを追求。今後はより多くの人にスポットが当たるコンテンツ作りを目指す
従業員の帰属意識、仲間意識を高めるには、今回導入したようなHRシステムの活用は大変有効だと思います。実は、弊社では4月に企業理念と行動指針を刷新し、社外には10月に告知しました。それに伴って、新しい企業理念と行動指針に沿った活動を実践した従業員の推薦や投票という新たな試みを実施しています。これまでならわからなかった、他部門や他支店の活躍についてシステムを通して知っているので盛り上がりますし、全体のモチベーションアップにもつながると思います。また、表彰される人や目立ちやすい人だけでなく、自己紹介リレーのように社内の各部門の人が掲載される仕組みも続けていくつもりです。多くの人が主人公になれるようなコンテンツを作っていきたいと思います。
もちろん、システムについては使ううちに気になる部分が出てきますが、気軽に相談ができ、都度改善していただいています。今気になっているものとしては、検索機能の充実と1on1ミーティングの実施確認についてでしょうか。カンパニーボードの内容について、カテゴリーで分けられたりタグ付けで検索できたりするとさらに使いやすいですね。近いうちに詳しくご相談しようと思っています。
私たちと同じようにエンゲージメンや人材の育成・維持の方法に迷っている企業、人事の方は多いと思います。今回導入した『MotifyHR』のように、コミュニケーションや育成を一つでできるシステムは大変効果的です。そして、交流の場を提供するだけでなくて、いかに活用してもらうかがポイント。運用が何よりも大切です。そのためには運営する側に管理職など社内的に発言力や影響力を持つ人を引き込み、先導してもらうと社内での浸透もより早く、スムーズになるのではないでしょうか。
まとめ
全国に拠点を持つ企業では、人材の管理・育成が大変難しくなります。そして業務を円滑にするコミュニケーションも不足しがち。そういった際に、物理的な距離に左右されないHRシステムは大変有効です。そして、自社に合わせてどう運用していくかが、導入後の成功のカギとなります。
今回ご紹介したキャスティングロードのように、使いながら少しずつカスタマイズを行い自社に合うよう育てていけるHRシステムは、エンゲージメントアップの最大の助けとなってくれるのではないでしょうか。
株式会社キャスティングロード
取締役 事業開発・管理本部 本部長 兼 業務管理部 部長
早瀬 仁洋氏
株式会社キャスティングロード
業務管理部 係長
松山 佳代氏