不払い残業に関するトラブルを避けるため、当社では労働時間の把握・管理を徹底させています。
正社員に関しては、記録書類を3年間保存しています。派遣社員についても出退勤の記録を残しますが、正社員と同様に保管する必要がありますか。それとも、残業代の支払義務は派遣元が負うので、破棄しても差し支えないでしょうか?
【結論】直接証拠として3年間保管する必要がある
記録の保存については派遣先に労働者派遣法と労働基準法の両方が適用されるため、直接証拠として3年間保管する必要があります。
労働時間の把握・管理に関して、労働者派遣法と労働基準法の両方の規程が適用されます。
まず、労働者派遣法によると、派遣先は派遣先管理台帳を作成し、3年間保存する義務を負っています(42条)。記載事項の中に、派遣就業をした日ごとの始業、および終業時刻並びに休憩した時間(42条1項5号)があります。派遣先は、始業・終業の時刻、休憩時間を記録すると同時に、派遣元に対して通知しなければなりません。
一方、労働基準法を見てみましょう。派遣先は派遣労働者の直接の雇用者ではありません。しかし、労働者派遣法の特例(読み替え)規定により、一部の条文は派遣先にも適用されます。
具体的には、法定労働時間を定める労働基準法32条、休憩を定める同法34条等については、「派遣先の事業のみを派遣労働者を使用する事業」とみなします(労働者派遣法44条2項)。ですから、派遣先は、労働基準法上の使用者として労働時間の把握義務を負います。
一方、記録の保存(労働基準法109条)については、派遣先・派遣元の両方に適用があります(労働者派遣法44条5項)。使用者(派遣先の使用者を含む)は、労働者名簿、賃金台帳および雇入れ、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を3年間保存しなければならないのです。
労働者名簿、賃金台帳に関する特例はなく、派遣先に作成義務と保管義務はありません。しかし、「労働関係に関する重要な書類」については、時間には含まれません。
まとめ
派遣先も保存義務を負っています。
具体的には労働時間の記録に関しては、「使用者が自ら始業・終業時刻を記録したもの、タイムカード等の記録、残業命令書およびその報告書並びに、労働者が自ら労働時間を記録した報告書」「派遣先台帳」が「重要な書類」に該当するとされています(平成13・4・6基発※339号)。
さらに、派遣先は、労働基準法上の使用者として、派遣労働者に関しても、タイムカード等の「1次資料」を3年間保存しておくべきといえるでしょう。
※基発=厚生労働省労働基準局長から各都道府県労働局長宛ての通達
【記事提供元】安全スタッフ2017年1月1日号
http://www.rodo.co.jp/periodical/staff/