当社は製造業です。研究開発部門については時間外・休日労働(36)協定のほか特別条項を結んでいます。時間外労働の累計が1年の協定時間をオーバーしそうな勢いです。しかし、研究・開発業務にはそもそも一般的な時間外労働の上限基準が適用されません。協定で定めた時間を超えてしまった場合、どうなるのでしょうか?
【結論】年や月あたりの時間数を見直すこと。その一方で、過重労働を削減する努力も忘れずに。
36協定を結ぶ場合、「労働時間の延長の限度等に関する基準」(平成10・12・28労働省告示154号)の枠内で時間外労働等の限度時間を定めなければいけません。ただし、「新技術、新商品等の研究開発の業務には適用しない」としています(限度基準5条3号)。1ヵ月45時間、1年360時間等の限度を超えて時間外労働の総枠を定めることも可能です。
新技術、新商品の開発の業務とは、「専門的、科学的な知識、技術を有する者が従事する新技術、新商品等の研究開発の業務」(平成11・1・29基発45号)とされています。研究開発は「業務」ですから、研究開発部門に所属していても、前記定義に該当しない業務等に従事者は適用除外の対象には含まれません。
研究開発業務の従事者であっても、労働基準法32条の適用自体は除外されないので、1週40時間、1日8時間を超えて労働させようと思えば、労働基準法36条に基づく協定を締結し、労働基準監督署に届け出る必要があります。協定時間をオーバーすれば、一般的な業務と同様、労働基準法32条違反等に問われます。
業務の性質から限度時間の適用が除外されているとはいえ、過重労働が及ぼす負荷を放置するわけにもいきません。
「過重労働による健康障害防止のための総合対策」( 平成2 0・3・7 基発0307006号)では、特別条項を定めた場合でも月45時間以下とするよう努めるものとする等、時間外・休日労働時間の削減が求められています。あえて適用除外の対象にせず、一定の時間を限度とすることも可能です。この場合に、「1日を超える一定の期間」(1日を超え3ヵ月以内の期間および1年間)について延長できる時間を超えるときには、既存の36協定(特別条項)を修正し、年間何時間までという上限を別に定め、労働基準監督署に提出する必要があります。
まとめ
特別条項が発動できる特別な事情は臨時的なものに限られ、全体として1年の半分を超えないことが見込まれるものをいいます。一定期間が1ヵ月であれば、回数は年6回となります。発動回数を超えてしまう場合には、研究職は適用除外の対象として、現在の上限時間以上に定め直す必要があります。特別条項なしでいきなり80時間までといった定め方が可能になります。
※基発=厚生労働省労働基準局長から各都道府県労働局長宛ての通達
【記事提供元】安全スタッフ2017年2月1日号
https://www.rodo.co.jp/periodical/staff/