当社は初めて他社から出向者を受け入れます。その際、出向先である当社で労働条件を明示する必要があるのでしょうか。明示が必要なのは、入社時など労働契約の締結時と認識しています。労働条件の明示はもともとの籍がある出向元の義務だと思うのですが、いかがでしょうか?
【結論】受け入れた側の出向先にも労働条件を明示する義務がある。籍がある出向元も対応可
在籍型出向とは、労働者が自己の雇用先企業に在籍したまま、他の企業の事業所において相当長期間にわたって当該企業の業務に従事することを指します。
出向元と出向先では、就業の場所や従事すべき業務、始業・終業の時刻や休日などが異なっていることが考えられます。これらは基本的には出向先の就業規則によって定められ、業務遂行の指揮命令権も出向先が持ちます。
一定の労働条件に関して、労働基準法15条では、使用者は、労働契約の締結に際し、労働条件を明示しなければならないとしています。一部は書面の交付を義務付けています(労働基準法施行規則5条)。
書面でなければならないもの(同条1項1号から4号)は、以下の通りです。昇給に関する事項は除きます。
- 労働契約の期間に関する事項
- 期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準に関する事項
- 就業の場所および従事すべき業務に関する事項
- 始業および終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇ならびに労働者を2組以上に分けて就業させる場合における就業時転換に関する事項
- 賃金(退職手当および臨時に支払われる賃金、賞与その他これらに準ずる賃金などを除く)の決定、計算および支払いの方法、賃金の締め切りおよび支払いの時期に関する事項
- 退職に関する事項(解雇の事由を含む)
まとめ
使用者が書面により明示しない場合、30万円以下の罰金(労働基準法120条1項)とされています。
労働者が出向する場合、在籍型であれ移籍型であれ、出向先と労働者との間で新たに労働契約関係が成立するものであるので、出向先は当該事業場における労働条件を明示することが必要とされています。
なお、この労働条件の明示は、出向元が出向先に代わって行うことも差し支えないとされています。具体的な労働条件が明示されなくても、労働者の労働条件は、現実には就業規則等の定めるところによることになり、労働契約自体は有効に成立するとされています。
【記事提供元】安全スタッフ2017年5月15日号
http://www.rodo.co.jp/periodical/staff/