女性従業員が職場からの帰宅途中で美容院に立ち寄り、2時間ほどサービスを受けた後、自宅へ向かう途中で事故にあったようです。この場合、労災保険の通勤災害として認められるのでしょうか?
ポイントは“通勤”と認められる“移動”
通勤災害とは、「労働者が通勤により被った負傷、疾病、障害又は死亡」のことをいいます。従業員の“移動”が“通勤”と認められるためには、その移動が業務に関連して行われていることが必須となります。
つまり、業務に就くために(出勤)、または業務が終了したために(退勤)、行われる移動であることが必要です。前提として、被災当日に就業することとなっていた、または現実に就業していなければいけません。
また、労働者災害補償保険法(以下、労災保険)において“通勤”とは、次のような3つの“移動”を、合理的な経路及び方法によって行うことをいいます。業務の性質を有するものは含まれません。
- 住居と就業の場所との間の往復
- 就業の場所から他の就業の場所への移動
- 住居と就業の場所との間の往復に先行し、又は後続する住居間の移動
移動の経路を逸脱したり、中断したりした場合には、通勤とはみなされないので注意が必要です。
ただし、例外もあります。労災保険法第7条3項では、「当該逸脱又は中断が、日常生活上最低限度のものである場合は、当該逸脱又は中断の間を除き、この限りではない」としています。
つまり、日常生活上最低限度の行為である場合には、「その逸脱・中断を除き、その後の通勤または帰宅途中は労災保険法の通勤に当てはまる」ということです。
では、この日常生活上最低限度の行為とは、どのようなものなのかを以下に記載します。
【日常生活上最低限度の行為の例】※
- 帰宅途中惣菜等を購入すること
- 独身者が食堂に食事に立ち寄ること
- クリーニング店に立ち寄ること
- 理髪店または美容院に立ち寄ること
- 職業訓練を受けるために公共の職業開発施設や大学・高校等に行く場合
- 選挙権の行使や直接請求権の行使の場合
- 病院や治療院(整体・針灸等を含む)に行く場合
※解釈の一例です。状況などによってこの限りではありませんので、詳しくはお近くの社会保険労務士にご相談ください
参考:通勤災害について(厚生労働省東京労働局)
まとめ
このことから、美容院に立ち寄った後、帰宅する途中で災害にあったときは通勤災害として認められることになります。
通勤災害になるのは「合理的な経路に復した後の災害」ですので、美容院の中で転倒し、ケガをしても労災保険には適応されません
記事提供:助成金・給与労務手続センター本部
社会保険労務士法人HRサポート