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労務110番

退職金は人によって支給する・しないを選ぶことができる?

公開日:2019.4.23

    勤務態度が悪く業務成績も悪いAさんが退社することになりました。彼は、先輩が退職金をもらっていたので自分ももらえると思い、退職金を請求してきました。当社では、その人の働きに応じた退職金を支払ってきましたが、Aさんの働きぶりでは払うつもりはありません。支給しないといけないのでしょうか?

    支払う・支払わないの判断は任意で決められる?

    労働基準法89条により、常時10人以上の労働者を使用する者には、就業規則の作成義務があります。
    しかし、そこに退職金に関する事項を絶対に記載しなければいけないという規定はありません。そのため、就業規則に退職金制度を設けていなければ、退職金を支給する義務もなく、逆にどのような方法で退職金を計算するかも会社の自由になります。

    ただし、いったん就業規則の中に退職金規定を定め、金額や支払い方法を具体的に明記しているのであれば、そのルールは守られなければならず、ルールに反するような任意の判断はできなくなります。

    では、退職金規定を定めていない会社の場合は、どうなるのでしょうか?

    就業規則に退職金に関する規定が定められていないのであれば、原則として、退職金制度はないものとみなされます。

    それでも、退職する人やその状況によって、会社側から感謝の気持ちなどの表明として、いくらかを餞別代わりに包むということは、場合によってはあるかもしれません。

    退職金に相当するお金を反復継続して支給しており、そのことを労働者も認識している状態が認められれば、規定していなくても、就業規則を補完するかたちで労働条件となることがあります。これを『労働慣行』といいます。

    たとえば会社に退職金規定はないものの、過去に支払ったことがあったという場合には、今後退職した労働者に退職金を請求されることもあるということです。



    円満退職に欠かせない就業規則の共有

    今回のケースは、以前Aさんの先輩に支払っていた場合と、今回Aさんに支払わない(支払いたくない)場合の事例が2つしかなければ、習慣と言えるほど反復して支払いが行われたことの証明は難しいので、反復継続とは認められず、労働慣行とは言えませんので、支給する義務はありません。

    しかし、もしAさんの先輩以外にも多数の人に退職金を払っていた事実があるのであれば、労働慣行により、Aさんへの退職金の支払い義務は発生します。

    従業員がなんらかの事情で退職する場合、円満にことを運びたいものですが、退職金について明確な規定が共有されていないと、トラブルに発展しかねません。こうしたことを避けるためにも、退職金規定の整備やその運用方法について、一度見直してみてはいかがでしょうか。

    この記事を書いた人

    HR BLOG編集部

    このブログでは、「経営者と役員とともに社会を『HAPPY』にする」 をテーマに、HR領域の情報を発信しています。

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