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大雪で従業員がタクシー通勤した場合、そのタクシー代はどう処理したらよい?

大雪により公共交通機関に遅れが出た日に、始業時間に間に合わせるため、従業員が自己判断でタクシーを使って通勤してきました。
後日、そのタクシー代を請求されたのですが、これはどのように処理したらよいでしょうか?

契約時の通勤交通費を超えて支払う必要はない

結論から言いますと、大雪などの天候不良の際に従業員がタクシー通勤をしたときや、自宅に帰れないためホテルに宿泊したときの費用を請求されても、会社に支払う義務はありません。
そもそも労務の提供という債務を履行するための費用は、労働者が負担すべきものとされています。

たとえば会社へ行くためには、スーツやネクタイ、靴など、その職場や業務にふさわしい服装や、ビジネス用のバッグなどが必要となってきますが、これらも労働者が労務の提供を行う際の費用ですので、基本的に労働者が負担すべきものと考えられています。
そして電車通勤やバス通勤の運賃や、車通勤のガソリン代などの通勤交通費も、労働者が会社=労務提供する場に行く費用ですので、労務の提供履行のための費用といえます。

この通勤交通費に関しては、労働基準法で明確な定めなどがなく、会社が支給することは義務ではありません。そのため、従業員が通勤に要する費用を会社が負担するかしないか、また負担する場合、その程度はどこまでかなど、すべて会社の自由な裁量で判断してよいことになっています。

通常は、労働契約時に、通勤にかかる交通費の上限額や支給方法について、お互いの合意に基づき決定し、契約を締結します。それを超える別途の費用負担を会社が負う義務はないということになります。

ただし、もし取引先との商談に遅れそうなときや、業務上やむを得ない場合にタクシーを使ったときには、タクシー代の請求に応じることが望ましいです。

天候不良時を想定して対応の基準を決めておく

余計なトラブルを避けるためにも、天候不良や災害により公共交通機関が乱れたり、計画運休が行われたりする場合の出社や退社、自宅待機などについて、対応の基準を定めておくとよいでしょう。たとえば、電車が止まったときの出社についての指示の仕方や、『出社する・しない』の判断基準をどうするか、また、通常の通勤手段以外を利用した場合の費用などについてです。これらを明確にし、従業員に周知しておきます。

今回の質問者のケースでは、勝手に判断したことは注意しましたが、始業時間に間に合わせるためという思いをくみ取り、特別に支給しました。今後は、費用負担はしないことを周知し、また就業規則で天候不良時の対応基準を見直すことになりました。

天候不良時の判断基準などをつくっていない会社は一度検討してみてはいかがでしょうか?