オンボーディング Onboarding 「新卒社員」や「中途社員」が辞めない仕組みづくり
『オンボーディング』とは、新入社員をスムーズに社内に溶け込ませ、パフォーマンスを上げさせるための一連の仕組みづくりを言います。この冊子ではHR先進国であるアメリカ企業の事例も踏まえ、人材育成のための最新のメソッドを解説。
オンボーディングの具体的な取り組み方をご紹介しています。
オンボーディング
公開日:2020.1.29
インターネット広告配信のプラットフォーム運営を主軸に幅広くサービスを展開し、業界内で注目を集めている株式会社マイクロアド(以下、マイクロアド)。同社は「Redesigning the Future Life」という理念のもと、幅広くサービスを展開しつつ、人材育成にも力を注いでいます。
前編に引き続き、コーポレートデザイン本部の伊藤允晴氏と、同部署・広報の中山立奈氏に、ユニークな社内制度を導入した経緯、社内での効果についてお聞きしました。
目次
前編で紹介した部署の異なる先輩社員3人がメンターとなる新卒専用の制度『米とも』に対して、『中途Meetup』という中途入社の社員のための制度があります。中途⼊社の入社時期が近いメンバーを一斉に集め、社長・役員・採用に関わった社員が集まって、⼤歓迎会を⾏っています。ここ数年は、会社近くのスナックを貸し切ってやっており、スナックのママ、ウェイター含めすべてマイクロアドの社員が担当して実施をしています。
同時期入社の中途社員同士でつながること、また、自組織以外の社員とコネクションをつくり、仕事がよりやりやすい環境をつくることを⽬的として⾏っています。スナックは店自体がコンパクトで距離が近い空間のため、お互いに話しやすい空気になり、毎回、盛り上がって終了しています。中途社員の⽅だと、こういった機会がないとなかなか他部署の方ともコミュニケーションをとる機会が少なかったりするため、参加メンバーからも好評の企画です。
中途入社にありがちな、「さぁ、お⼿並み拝⾒」というような空気をなくし、よりスムーズに組織に馴染んでいただくことで、中途社員の早期ミスマッチの解消にもつながり、オンボーディングにもとても効果的な施策になっているのではないかと思っています。
また、中途社員から「もう⼀度中途Meetupをやりたい︕」という声が多く上がったため、『中途Meetupリターンズ』と称し、入社時期に『中途Meetup』を⾏ったメンバーでの再開催を今年7月に初めて実施しました。この頃にはすでに顔なじみになっていることもあって、まさに同期会のような雰囲気で、参加者からも「改めてこの会社で頑張っていきたいと思った︕」「モチベーションやエンゲージメントが⾼まった︕」という声があり、企画サイドとしては嬉しく感じています。
『スライド8』は午前7時〜11時の間で⾃由に出社時間を調整できる、マイクロアドオリジナルの時差出勤制度です。就業時間は変わらず、出社時刻から休憩を含めて9時間勤務を基本としています。たとえば、朝7時に出社した場合は16時が定時終業となります。
⼀般的なフレックスタイム制と違って、⼀⽇の所定労働時間は決まっているので、個⼈がその⽇の仕事量に合わせて「今⽇は遅く来て早く帰ろう」ということはできませんが、就業開始時間を調整できる点は社員からも喜ばれています。
そもそもこの制度は、「自律的に働く組織づくり」をテーマとした残業時間削減を目的とし、労務チームが企画導入を進めました。
元々、エンジニアは裁量労働制で、それ以外の社員は9:30~18:30固定の就業時間となっていました。ただ、突発的な作業が発生したり、クライアントとの会⾷があったりで、残業する⼈も多かったんです。そこで、安易に「残業禁⽌」というルールにしてしまうのではなく、「⼀⽇の就業時間をもっと意識して⾃律的に働いてもらうことで改善していけるのではないか︖」と考えて⽣まれたのが、この『スライド8』です。
導入時は、出退社の時間が⼈によってまちまちになることを不安視する意⾒もありました。
ただ、会社として「⾃律的に働く」という考えのもと、全社に展開していきつつ、残業を減らしたいという考えでしたので、数ヵ⽉テスト期間を設け、取り⼊れていきました。
導⼊してみて、社員から「⼦どもの送り迎えの時間をつくることができたので良かった︕」「早帰りしてジムに⾏き、リフレッシュできました︕」など、嬉しい声がたくさんあり、うまく制度が浸透していると思います。基本的に11〜16時は全員出社しているので、必要な会議などは⼗分に対応できています。
これまでご紹介した以外にも『ママパパ4』などの社内制度があります。
『ママパパ4』という制度は、未就学児のお⼦さんがいる正社員は⽉4回までリモートワークが可能になるというものです。お⼦さんのいる社員が増えてきたことから、この制度を新設しました。ただ私たちの考えとしては、実際に社員同⼠、⾯と向かって対話することで⾒えるものや気づくことも多いと思っているので、現状ではフルリモートを導入する予定はありません。もちろん、常に状況に合わせて検討していくつもりです。
こうしてつくりあげた社内制度を活用してもらうには、役職関係なく、全員が率先して使ってもらうことが大切です。そして、もし使いにくい場合は、改善していく必要があると考えています。さらに、その前段階で大切なのが「浸透させる仕掛け」です。そのために社内制度のネーミングには徹底的にこだわり、社員に向けた本格的なCMをつくったり、ポスターを貼ることもあります。
たとえば前述の『MAnavi(マナビィ)』は、組織の育成文化として浸透させるため、わかりやすいネーミングが良かったのですが、なかなかしっくりくる名前が思いつきませんでした。悩み続けていたある日、1人のメンバーのアイディアからMAnaviに決まり、その後はすんなり社内で浸透していきました。みんなが⾃然に「MAnaviについてなんですが〜」と日常会話でも使ってくれていて、ホッとしています。
社外の人にとってはまったく意味のわからない言葉であっても、呼びやすく根付きやすいキャッチ―なネーミングにすることは制度が浸透する秘訣の一つだと思います。経験上、ありきたりなネーミングにすると、あまり使われない制度になっています。結果、社内制度としても失敗していることが多い気がしますね。覚えやすくて言いやすいことは実はすごく大切です。
今までもそうですが、チームで業績を上げていくことと個人の働き方に対する考え方の尊重、この両輪を大切にするのがマイクロアドの考え方です。そのために今後も必要な社内制度を検討・導入し、個人とチームのパフォーマンスを最大限に引き上げていきます。
社内制度をつくるときは、⼈事の⽴場で考えるのではなく、「⾃分がいち利⽤者だったらどうするか」と考えています。つくった制度をどう伝えて、どう利⽤してもらうか、相⼿にきちんと伝わるようデザインすることで、全員が楽しめる⾃社ならではの制度になるはずです。その際、ただ制度をつくるだけではなく、伝え方や運営まで考える「プロデュース⼒」が⼤切だと思います。
もしつくった制度が⼀般的なものだったとしても、”いかにして⾃社の⾊を付けていくか”で、社員に愛着を持ってもらえるか、浸透させられるかが決まると考えています。
人事担当というスタンスだけでなく、一歩踏み出し、使う立場になって社内制度を考えるマイクロアド。個人のパフォーマンスを最大化するために社内制度を使うという一貫した考えを礎に、制度のネーミングや周知などの仕掛けにこだわり、全員で楽しんでいこうという姿勢、アイデアには脱帽です。
社内制度の改善や浸透に悩んでいる人事担当の方はぜひ参考にされてはいかがでしょうか。
この記事を書いた人