オンボーディング Onboarding 「新卒社員」や「中途社員」が辞めない仕組みづくり
『オンボーディング』とは、新入社員をスムーズに社内に溶け込ませ、パフォーマンスを上げさせるための一連の仕組みづくりを言います。この冊子ではHR先進国であるアメリカ企業の事例も踏まえ、人材育成のための最新のメソッドを解説。
オンボーディングの具体的な取り組み方をご紹介しています。
パフォーマンス管理
公開日:2019.4.4
成果を出すために、人という資源を最大化させる 機能を担う人事。
その認識を持ちつつも、 いまだに多くの企業が慣習的な雇用関係から、抜け出せずにいます。その根本的な要因はどこにあるのでしょうか。 そして、突き抜ける道はどこに開けているのでしょうか。
今回は、未来型リーダーの潜在能力を引き出す
アジアン シーザーズ代表の石坂 聡氏にお話をうかがいました。
※記事提供:月刊プロパートナー
目次
これまでの人事の仕事は、採用から退職まで、人の流れを管理することが主たる業務でした。しかし、今は事業に対して、従業員一人ひとりのパフォーマンスをどうやって最大化させるかを戦略的に考える「ブレイン」といえます。成果を上げさせるために、実務の教育も必要だし、自発的に考えて行動できる人間力を高める育成も必要。そして、事務所の文化に愛着を持ってもらう必要もあります。ビジネスをする上で重要な資源である人の資質を見極めて、高めていくのが人事部の役割なのです。
その背景には、「個の目覚め」が非常に影響しています。あらゆる境界線を越えて、人やモノ、情報を入手・発信ができる現代において、個人の行動様式はそれまでと大きく変わってきています。生まれながらにしてIT環境で育ち、 ネットツールを使いこなすミレニアル世代が全世界の50 %を占めています。彼らは異なる人種、性別、文化、価値観を受け入れる多様性と、合理的な判断力を持ち合わせているため、一方的な価値観の押しつけを好みません。それよりも、個人の生き方や自由を追及する傾向にあるのです。
しかし、企業側は、このような従業員の価値観の変化に気づいているものの、人事のインフラを整備できていません。「給与を払ってるんだから、辞令を出したら家族がいようが従ってもらうのが当たり前」という企業側に対して、雇用者側は「老後まで面倒を見てもらうから休日出勤、転勤には従わないといけない」。このような「御恩と奉公」によって成り立っていた雇用関係は、大手企業さえも経営破綻する今、すでに崩壊の一途を辿っています。
その半面、20年前には聞いたことがなかったFacebookやGoogle、Amazon、そしてNetflixが世界を席巻しています。世界規模で市場が大きく変化しているのですから、この先どう淘汰されていくのか誰もわかりません。
「保証」を担保に一方的に業務を押しつけるのではなく、お互いが本当にしたいことを語り合い「フィット」する関係を個人と構築しないと人も企業も育たない時代に突入したといえます。
ひと昔前は、「人は企業を去るのではない。上司を去る」といわれていました。最近は「文化を去る」といわれています。「入社してみたら、何か違う」というのは、企業側が自社の文化について理解していないことが大きく起因しています。公式サイトに大々的に理念を掲げておいても、トップ自身が歩むべき方向性を断言して行動に移していない場合が多いのです。質を重視するのか、スピードを重視するのか。実力主義なのか、終身雇用なのか。明確さが必要です。何が最も重要なのか判断して、決断する。そして、社員の前ではっきり言葉にし、行動に移させることが、文化となっていくのです。
しかし、決断をしない、できないという事態が日本の企業では非常に多かったりするのです。なぜできないのかというと、失敗を恐れるあまりに決断を先延ばしにしがちなメンタリティが影響していると考えられます。
私自身、海外勤務時代の上司に「どんな失敗をしても良い。最善を尽くしての損失なら良い。その代わり、どちらがいいのか必ず自分で決断しないといけない。たとえ間違っていても、次から正しい判断ができる経験を積んでいるんだ」と、口酸っぱくいわれていました。
決断力を磨くには判断する場を経験することが重要です。そこで、ご自身の事務所を振り返ってみてください。従業員に判断を任せる文化はありますか?
従業員にやらせてハラハラするなら、最初から自分がやったほうが良いと思うこともあるでしょう。しかし、開業して人を雇うようになったら権限移譲する度量がないといけません。逆に、このような文化がなければ、いつまで経っても自分で決められない「指示待ち従業員」を抱えることになります。
人間であれば、本質的に欲する3つの要素について、真剣に考えることです。その3つとは、LOVE(愛)、HEALTH(健康)、WEALTH(富)。企業はお客様にこれらを満たすサービスを提供しているはずです。従業員に対しても、これらを満たしてあげるために何をすればいいのか考えることです。また、従業員自身にも、何によって満たすことができるのか考えさせるべきなのです。そして、この3つを満たした先にどうありたいのか話し合える環境をつくることです。
人は「何かから自由になりたい」という衝動を抱えています。しかし、「何のために自由になりたいのか」を考えることは苦手です。大切なのは自由を得た後に何をしたいかです。従業員一人ひとりのやる気を伸ばすには、個人の「こうしたい」を把握し、実現できる環境を提供してあげることです。
しかし、双方がそのレベルに達していないのが現状。インフラも整っていなければ、対峙する機会もない。会話をする機会がなければ、従業員の不平や不満は溜まっていく一方です。では、この不平不満の源泉は何なのでしょうか。個人も、自由になったらどうしたいのか明確な意思を持っているとは限りません。
本質的な原因が見えずに、給与や評価設定など制度を見直しても、事態は好転しません。だからこそ、企業と個人の会話を増やしていくべきなのです。そして、この会話を弾ませるのが、リーダーが担うべき役割です。
新しい時代のリーダーに求められる要素は、決断と実行。ピラミッドの頂点にいる存在ではなく、円の中心にいる存在こそが、真のリーダーです。真のリーダーは、自身が目指すべきビジョンと目的をはっきり明言し、行動に移すことで人を引きつけ、やがて人を動かしていきます。肩書で人はついてきません。
今一度、自身の事務所の中を見つめ直してみてください。従業員が何を思って仕事に取り組んでいるのか、この先どうしたいのか会話をすることで活路が見出せるはずです。
HRコンサルタント協会 理事
石坂 聡氏
Ishizaka Satoshi
外資系金融機関の人事部長を歴任。2013年にコカ・コーライーストジャパンの常務執行役員人事本部長に就任し、約30社の人事制度統合、企業文化改革、多大なるシナジー創出などを短期間で実現。電撃人事エグゼクティブとして名を馳せた。2017年10月にAsian Caesarsを立ち上げ、人事改革とグローバル人材育成のエキスパートとして、人事顧問サービス、エグゼクティブコーチング、講演など、幅広く活躍。
記事提供
士業の成功をサポートする実践経営マガジン
『月刊プロパートナー』
月刊プロパートナーは、顧客獲得のためのマーケティング手法や営業力強化の実践的なメソッド士業事務所の経営に必要な情報、ノウハウをわかりやすく解説する最強の実践型の経営マガジンです。
その他にも他士業や他業界との連携など、今日から使える情報が満載です。
この記事を書いた人