オンボーディング Onboarding 「新卒社員」や「中途社員」が辞めない仕組みづくり
『オンボーディング』とは、新入社員をスムーズに社内に溶け込ませ、パフォーマンスを上げさせるための一連の仕組みづくりを言います。この冊子ではHR先進国であるアメリカ企業の事例も踏まえ、人材育成のための最新のメソッドを解説。
オンボーディングの具体的な取り組み方をご紹介しています。
パフォーマンス管理
公開日:2021.4.14
上司にとって部下との面談は、現状を把握するために大変有用な手段です。しかしその一方で、部下にとっては大きな負担になる可能性もあります。では、上司と部下の面談を成功させ、実りあるものにするためには、どうすればいいのでしょうか。
ここでは、部下との面談を成功させるためのポイントと、上司側が何をするべきなのかをまとめていきましょう。
そもそも、部下が憂鬱になってしまうような面談を、わざわざ行う必要があるのでしょうか。面談の是非については人によってさまざまな意見があるとは思います。しかし、会社側からすると、1対1の面談は非常に大きな効果をもたらします。
一つめの効果は、部下の情報を詳しく知ることができるという点です。上司と部下は1日の多くを同じ空間で過ごすとはいえ、把握している情報は、実はそれほど多くないでしょう。特に部下が個人で抱えているプライベートな問題などについては知らないことのほうがが多いはずです。それでは部下個人を表面的に知っても、内面まで知ることはできません。
内面を知らないと、部下に対して適切なケアをすることができなくなる場合があります。たとえば、自己評価が高い部下に対して無闇にサポートをつけたり、手取り足取り教えたりすると、部下のプライドを傷つけてしまい、信頼関係を築くのが難しくなってしまうでしょう。
そういった場合も面談を通して部下の情報を知っておくことで、適切な管理方法を学ぶことができます。そしてそれは、上司と部下の関係悪化を回避し、時には離職を防ぐ効力もあるのです。それ以外にも、部下が置かれている状況を知っておくことにより、特別な配慮が必要ならばそれを要請することもできます。
面談を行うことによる二つ目の効果が、精神的な結びつきが強くなるという点です。現代は、同僚や上司との結びつきが弱くなっているといわれています。特に若い世代は、自分の居場所をインターネットに求めていることが多く、仕事は仕事と割り切っている傾向にあるようです。
結果、悩んでいることや嫌なことをおくびにも出さず、すべての悩みをインターネット上の友人や遠距離の友人に打ち明けてアドバイスを受ける、ということも少なくありません。つまり、会社の上司が悩みや不平不満を把握しづらくなっているのが現代社会の特徴です。
そうすると、一見真面目に働いているように見える新入社員が、ある日突然退職を申し出てきて驚いたりするようなことが起こってしまいます。面談は、こうした不平不満や悩みをあらかじめ把握することで、いわゆる「びっくり退職」をなくすことができるというメリットがあるのです。また、精神的結びつきが強くなることで、厳しい状況になっても一緒に頑張ろうという連帯感も生まれます。
このように、対面での面談には大きなメリットがあるのです。
面談が、部下を管理するうえで効果的なのは前述したとおりです。しかし、これが効果的に働いていないと、お互いの時間を消費するだけの、意味のない時間を過ごすことになってしまいます。そのため、上司が部下に対する配慮を欠かさないようにしましょう。
まずは、面談が始まる前に、流れを決めておきましょう。あまりにも雑談ばかりになってしまうと、部下側も面談の意義がわからなくなってしまうからです。基本的な流れは、部下の緊張を和らげるアイスブレイク、次に部下側の自己評価、上司側の部下に対する評価と共有、最後に最終的な評価と今後の目標の設定です。この流れを、それぞれの業種や面談のタイミングによって変えていきましょう。
また、面談がやりやすくなるように、自己評価シートや要望を伝えやすくする「1on1ミーティングシート」のようなものを用意しておくと、よりスムーズに進めることができます。ここで重要なのが、面談で知りえた秘密は守るという点と、面談における要望や不平不満は評価には反映させないという点です。そうでないと、本心を聞き出すことができません。
面談の準備が終わったらいよいよ日程を決めますが、当然、休憩時間や休日中などに行ってはいけません。面談の時間は基本的には仕事の時間中に行いましょう。
面談において、部下から忌憚のない意見を取り入れられるかどうかは、面談最初のアイスブレイクにかかっています。ほとんどの部下は面談という状況に緊張しているため、まずは仕事に関係のない雑談から始め、お互いの緊張を和らげましょう。部下の趣味などの話題であれば、よりリラックスできるはずです。
できれば普段から趣味の話くらいはできる距離感を保っておくのが重要です。仕事だけの割り切った付き合いにならないように気を付けましょう。
面談を実りあるものにするためには、その面談によって、部下が「何かを得た」という実感が得られるとよいでしょう。そのため、部下が積極的に発言できるようにするのがポイントです。もし、部下に発言の機会を与えず、一方的に伝えたいことを伝えるだけならば、わざわざ面と向かって話さず、書類で通告するだけでいいト思われてしまうかもしれません。
ただ、自由に発言していいと言っても、穏便に早く面談を終わらせたい部下の場合は「特にありません」や無難な内容しか言わないと思うので、質問をするような形で面談を勧めることも念頭に置くといいでしょう。例えば、「仕事に対しての不満点はどこか」「改善すべき点はどこか」「今回のプロジェクトでよかった点はどこか」「悪かった点はどこか」など、具体的な内容を質問しましょう。
質問形式にすることで、部下側も意識する領域が狭くなり、質問に答えやすくなります。上司側としても、自分の聞きたいことを直接聞きだすことができるので、効果的かつ効率的です。
加えて、部下との面談を何度か経たことを前提として、「これから何をすべきか」をアドバイスするのもよいでしょう。面談を重ねると、部下のよい点と持っている能力が見えてくるはずです。それらを褒めて伸ばすのも面談にとって重要ですが、「その長所を使って何をすればよりよい状態になれるのか」ということを示すと、部下側も具体的な行動の指標が出来てやりやすくなります。
例えば、パソコンのスキルに優れている部下がいるのなら、パソコンのスキルを活かせるポストを用意したり、パソコンのスキルがない従業員と仕事を一部交代したり、仕事に活かせるパソコンのスキルを磨く先を伝えたりといったことがあげられます。
このように、面談では部下の情報を把握するだけではなく、部下のこれからの行動の指標を共同で見つけることもできるのです。
面談は、部下にとって大きな負担です。特にそれほど仲のよくない上司との面談は、普通の仕事よりもつらいと考えてしまう部下も少なくありません。しかし、それを鑑みても、面談は部下を効率的に管理するうえで重要です。
そのため、部下と面談をする際は上司側は部下側の事情に気を配らなければなりません。相手が緊張しないような配慮や、部下が答えやすいようなツールづくりはその一環です。ここでお伝えしたことを意識して、ぜひ面談を実りあるものにしてください。
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