オンボーディング Onboarding 「新卒社員」や「中途社員」が辞めない仕組みづくり
『オンボーディング』とは、新入社員をスムーズに社内に溶け込ませ、パフォーマンスを上げさせるための一連の仕組みづくりを言います。この冊子ではHR先進国であるアメリカ企業の事例も踏まえ、人材育成のための最新のメソッドを解説。
オンボーディングの具体的な取り組み方をご紹介しています。
パフォーマンス管理
公開日:2020.11.19
意欲を掻き立てるような高い目標を立て、チャレンジを通じて成長を促すのがOKRの狙いです。誰でも達成できるような目標ではOKRの効果は望めないと言われていますが、一方で高すぎる目標も逆効果。では、どのような目標設定が理想的なのでしょうか。
目次
野心的な目標(Objective)と、重要な成果(Key Results)を結び付けた目標管理方法として知られるOKRにおいては、いかにして高い目標に挑むかが重要視されます。企業が定めたOKR、組織や部門のOKR、個人のOKRが階層を成すような設定を行えるため、それぞれが自然と紐づいた状態を生み出すことが可能です。
結果として、全従業員が企業の課題を共有できるようになり、社内の意識統一が図れます。また、各階層の取り組みや成果をメタ視点から客観視しやすく、自社が正しい方向に進んでいるかを知る道標としても機能します。
従業員が急増し、創業者や経営トップの意識を社内に浸透させるのが難しい状況下においては、OKRの導入によってビジョンや目標を言語化しながら共有していくことが可能となります。また、創業直後や、大幅なシフトチェンジを行う企業で、イノベーションを起こしたいときや、チャレンジ精神を根付かせたい企業にもOKRは有効です。
高い目標を前にすると、やる気が増して高いパフォーマンスを残せる人も多いことから、簡単にはクリアできないObjectiveにするのがOKRのセオリーです。人事評価との直接的なつながりを避けたうえで、達成率60~70%となるようなOKRを設定することが、革新や成長を促進する結果を生むと言われています。
高めの目標設定が重要なOKRではありますが、高すぎると逆効果になることも知られています。目標設定理論の研究分野では「高い目標を掲げることで個人や組織のパフォーマンスがアップする」と知られている一方で、「度を越えた目標を設定するとパフォーマンスが低下する」ことも常識となっており、度を超えた目標設定は「クリアできるわけがない」「無理そうだから、やるだけ無駄」など、モチベーション低下につながってしまうこともあるのです。
OKRの効果を最大化させるためには、適切なレベル設定が重要です。また、どんなサイクルで運用していくのかも成否を分けるポイントとなります。レベル設定は、企業や部門の実情や、社員の能力やポテンシャルなどを考慮しながら探っていきます。四半期を基本サイクルとし、1~2週に1度ペースの高頻度でフィードバックを行うのが一般的です。
OKRの達成率は60~70%が理想的と言われています。達成率がこの値を極端に下回った場合は、Objectiveが壮大すぎてKRが実現困難だったなどのパターンが考えられるため、見直しが必要です。Objectiveに問題があったのか、それともKRの設定値が高過ぎたのか、原因を探って次のOKR設定に生かします。
また、達成率が高すぎるOKRも困り者です。簡単にクリアできるOKRの場合、達成率は高まりますが革新や成長は期待できなくなります。OKRが人事評価や報酬に結び付いていると、達成しやすい目標を立てる従業員が増えてしまう可能性があります。OKRと人事評価は切り離して運用していきましょう。
Objectiveの設定は「何を成し遂げたいか」を、誰にでも分かる言葉で明確に打ち出します。数値目標はKey Resultsで設定するため、Objectiveはワクワク感を重視したキャッチーな内容が好ましいでしょう。顧客に対してどんな感動を与えるのかを語り、企業や従業員が何を成し遂げるのかを打ち出します。
同時に複数のObjectiveを立てても構いませんが、数が多すぎると焦点がブレてしまいます。多くても3~5項目程度にとどめた方がいいでしょう。
Key Resultsは、具体的であること、計測可能であること、行動可能であること、現実的であることが重要です。また、締め切りを設定し期限を区切って達成度を測っていきます。Specific(具体的)、Measurable(測定可能)、Actionable(行動可能)、Realistic(現実的)、Time-bound(期限のある)という5つのキーワードの頭文字を取った、SMARTの法則に照らし合わせながら設定していくと、適切なKRが導きやすいでしょう。
OKRを導入するには、企業・部門・個人の階層を意識し、ObjectiveとKey Resultsを関連付けたロジカルな設計が必要になります。しかしその一方で、企業によって事情が異なり、働いている従業員も十人十色ゆえ、絶対的な正解は存在しません。
大掛かりなインフラやコストが不要なため、導入のハードルは低いものの、結果にコミットするような運用は一筋縄にはいかないのが実情となります。多くの企業は、微調整を繰り返しながら自社に合ったやり方を模索し、適切な達成率となるような設定を行っています。
OKRにおいては、透明性のある運用も重要です。各種ツールを使用して、各部門が何に取り組み、誰がどんな目標を掲げているかを知ることは、相互の刺激が社内の活性化につながるだけでなく、OKRに調整を加えて達成率の高低をコントロールするためにも役立ちます。
OKRのコミットメントを高めるためには、当事者による協議も重要です。運用結果を参考に、どうすれば達成率60~70%になるようなOKRを設定できるかを話し合っていきます。「従業員にチャレンジしてほしいから」と、経営陣がトップダウンでOKRを設定するのは好ましいとは言えません。経営陣には、OKRによって自社が何を成し遂げようとしているのかを社内に広め、必要な体制を整備すべく各セクションをリードするような仕事が求められます。
OKRへの取り組みが原因で、従業員たちのタスクが増えてしまう場面では「この取り組みは価値がある。だから時間を割いてほしい」と、経営陣が熱弁をふるってもいいでしょう。企業トップの本気の取り組みこそが、OKRの成功や企業の成長の原動力となるのです。
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