「ワークライフインテグレーション」という言葉をご存知でしょうか。仕事と生活のバランスを考える「ワークライフバランス」をより発展させた考え方で、仕事と生活を個別に捉えずに統合して考え、すべてを充実させる働き方を示します。企業がワークライフインテグレーションを推進することで、社員にも企業にも大きなメリットがあると期待されています。
目次
ワークライフインテグレーションとは
仕事もプライベートも共に人生の一部だと捉えるワークライフインテグレーションは、慶応義塾大学の高橋俊介教授ならびに経済同友会によって提唱されました。
具体的には、ワーク(仕事)とライフ(個人の生活)を個別に考えずに、共に人生の重要な構成要素として捉え、双方が充実することでより一層人生を充実させることができるということを指します。ライフ(個人の生活)の質が高まると幸福感をより一層感じられ、ワーク(仕事)での生産性も向上するなど、相乗効果もあると考えられています。
ワークライフバランスとワークライフインテグレーションの違い
ワークライフバランスは、内閣府が平成19年「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」を発表したことで一般的になりました。企業も積極的にワークライフバランスの考えを取り入れ、徐々に浸透していきました。
それでは、ワークライフバランスとワークライフインテグレーションは何が異なるのでしょうか。大きな違いを2点ご紹介します。
異なる点1:ワーク(仕事)とライフ(個人の生活)の捉え方
ワークライフバランスでは、ワーク(仕事)とライフ(個人の生活)は異なるものとして考えます。ワークライフバランスを考えるということは、両者のバランスを考えて働くという意味を指します。バランスが偏った場合は、もう一方を犠牲にしなければならないようなイメージを持つ人が多いでしょう。
一方で、ワークライフインテグレーションは、ワーク(仕事)とライフ(個人の生活)を統合して考えます。仕事、家族、家庭、学び、仕事以外のコミュニティなどを含めた、その人の人生そのものを一つのものとして捉えるのです。仕事とその他を区別しないことで、個人の生活の満足度が上がると仕事の生産性もあがったり、趣味でリフレッシュすることで仕事の集中力があがったりすると考えられています。つまり、ワーク(仕事)とライフ(個人の生活)の相乗効果を期待できます。
異なる点2:対象になる社員
ワークライフバランスは、子どもがいる女性社員や、家族を養っている男性社員、介護者のいる社員など限定された人だけが該当者だと誤解されがちでした。ワークライフインテグレーションの該当者は労働者すべてです。男女、既婚、独身、年齢などで区別されません。ワーク(仕事)とライフ(個人の生活)のバランスを取るために日々ストレスに耐えるのではなく、両者を統合したワークライフインテグレーションの考え方が広がりつつあります。
「仕事も生活も」どちらも充実させることで得られる2つのメリット
ワークライフインテグレーションを取り入れることで、従業員にも企業にもメリットがあると考えられています。具体的なメリットを2つご紹介します。
メリット1:生産性の向上
これまでの日本では、残業をして長時間働く社員が真面目な社員だとされてきました。それは製造業などの第一次産業や第二次産業が産業の主軸だったからです。しかし今では技術が進歩し、人の手による仕事は機械へと変わり、人は自分の頭で考えて仕事をつくり出さなければならない時代へと変化してきました。ワークライフインテグレーションによって、プライベートで学んだことや刺激を受けたことは、仕事に活かすことができます。自己成長すると、新しいアイデアが生まれるきっかけにもなるでしょう。結果的に、企業としての生産性向上にもつながると考えられています。
メリット2:柔軟な働き方を選択できる
ワークライフインテグレーションにより、自分の生活にあわせて働く時間や場所を選択できます。私生活を犠牲にして残業をしなければいけないということもなくなり、時短勤務・在宅ワーク・フレックス勤務などさまざまな働き方ができます。ワーク(仕事)とライフ(個人の生活)を「インテグレーション(統合)」させると、優先順位をつける必要もなくなるのです。
今後求められるワークライフインテグレーション
このように、ワークライフインテグレーションは、個人の人生を大切に考えるということにつながります。社員の人生の満足度が上がると、離職率の低下につながったり、優秀な人材の確保がしやすくなったりするでしょう。その結果、生産性も向上し、優良企業としてのブランディングができるなど、結果として個人だけでなく会社にも利益をもたらすのです。