オンボーディング Onboarding 「新卒社員」や「中途社員」が辞めない仕組みづくり
『オンボーディング』とは、新入社員をスムーズに社内に溶け込ませ、パフォーマンスを上げさせるための一連の仕組みづくりを言います。この冊子ではHR先進国であるアメリカ企業の事例も踏まえ、人材育成のための最新のメソッドを解説。
オンボーディングの具体的な取り組み方をご紹介しています。
リクルーティング
公開日:2019.2.28
少子高齢化の影響により労働人口が減少する中、中小企業のみならず、大企業でも人材不足が顕著となっている昨今…。
人材不足を解消しようと企業の人事部は採用面談を行うものの、「優秀な人材が採用できない」「採用してもすぐに退職してしまう」といった問題が多く発生しています。
こういった問題を解消するために人事部がすべきことは何か。
本記事では、採用・教育のコンサルタントとして活動している株式会社リード・イノベーションの代表取締役である礒谷幸始氏に、「企業の採用活動における今すぐ見直すべきポイント」についてお伺いしました。
「求職者の人生を真剣に考えて採用を行っている企業は、10%に満たないと思います。自社にもたらす結果を重視するのではなく、求職者の人生をサポートすることに主眼を置いた採用活動ができれば、必ず日本は元気になる。私はそう信じています」と礒谷氏。
しかし、多くの企業は現実的には「求職者としっかり向き合えていないことが多い」とのこと。
厚生労働省の調査によると、大卒の新卒者の1年以内の離職率は全体の1割強、3年以内の離職率は3割を超え、一人あたりの3年間の育成費用は1,500万円にものぼるそうです。
退職者の主な退職理由は、「求めている業務内容ではなかった」「やりがいが見つけられなかった」など。
「企業が人事を評価する基準は、採用人数です。そのため、人事は人数を多く採用することにこだわります。だから『自社に入社することが、その求職者の幸せにつながるのか』なんて、正直考える余裕がないんですよね…」と礒谷氏。
「優秀な人材が採用できない…」「採用してもすぐに退職してしまう…」という問題は、
企業の人事部が「求職者としっかり向き合えていないことが多い」ことに原因があるかもしれません。
では、求職者の人生を真剣に考え、長く、そして楽しく働いてもらうために、人事部側はどのような採用活動を行えばよいのでしょうか?
礒谷氏曰く、
求職者の人生をサポートする採用活動のポイントは「お互いが正直に会話すること」。
「面接時に、その人にとって人生の幸せとは何かを聞き出し、その実現に自社はふさわしい環境なのかを分析するべきです。そのためにはまず、企業側が正直にならないといけません。
残業や休日出勤があるならそれを隠さず伝えて『嫌ならやめておきなさい』と言えるのが理想です」。
採用面接では、自分をアピールするために求職者が話を盛ったり、うそをついてしまったりすることはよくあること。
しかし、採用面接をする側として考えると、大切な自社の仲間の一員として迎え入れることを考えれば、ウソ偽りなく「ありのままの自分」を伝えてほしいところです。
「例えば、面接時に『会社のトイレが和式で、男女兼用なんですけど…』って面接官から言われたら嫌ですよね。でもこれって求職者と本音で語っていると思うんですよ。『それでも御社で働きたいです! 成長したいです!』と言える求職者を採用するのがお互いのためだと思うのです」。
採用前と採用後のギャップを押さえるためにも、求職者と『本音』の会話ができれば、早期退職を防ぐことができるでしょう。
そして求職者、企業の両者にとってプラスになる採用活動を実現するためには
「事業計画と連動した採用計画を立てれば、組織は変わります」と礒谷氏。
「例えば、2025年には会社にどういう事業計画があるのか、なんの組織になっているのか、女性社員たちが何パーセント辞めていって、男性社員たちが何パーセント転職していて、離職率何パーセントで、この売上を作るために、何人必要で、この事業に合わせた人はどのように育成したらよいか、など。『事業計画を実現させるためは、どのような人財を何人、いつまでに採用するか』を計画書に落とし込むのです。それを全社員が理解していれば、長い目で見て自社にとっても、その人にとってもよい影響がある人財を選べるようになります」。
求職者にとって有利な状態が続いている就職活動市場。その中で、選ばれる企業になるためには、働く人にとって魅力的な環境をつくることがポイントです。
「魅力的な会社の一番の条件は、『そこで働く人が魅力的かどうか』だと思います。まずは職員に『この会社が好きですか?』と尋ねてみるのもよいかもしれません。また、魅力的な企業をつくるためには労働環境を整えることも重要ですし、それにはお金が必要です。例えば、高付加価値のビジネスモデルを開発して原資を増やすことも、結果としてよい人財を確保することにつながります」と礒谷氏。
事業計画と連動した採用計画を立て、働く人にとって魅力的な環境をつくることができれば、優秀な人材の採用・育成がうまくいくかもしれません。
今回は、株式会社リード・イノベーション 代表取締役の礒谷幸始氏に、
『企業の採用活動における今すぐ見直すべきポイント』についてお伺いしました。
重要なのは、求職者と『本音』の会話をし、採用計画を立てること。
良いことも悪いこともお互いに本音で話し合い、採用計画に沿った採用活動をすれば、結果としてよい人財を確保することにつながるでしょう。
礒谷 幸始(いそや ゆきはる)氏
千葉県生まれ。立命館大学在学時に体育会アメリカンフットボール部の主将として、チームを大学史上初の日本一に導く。大学卒業後は日本IBMに入社し、6年半に渡って営業の経験を積む。その間も社会人アメフトチーム『IBM Big Blue』のキャプテンとして常勝チームへと成長させる。その後、人事としてエンターテイメント企業、東証1部上場チェーン企業の人財開発部門のゼネラルマネージャーを務める。2015年に株式会社リード・イノベーションを設立。マネジメントコーチングと採用・教育コンサルティングを柱に事業を展開している。
『1万人を面接してわかった
上位5%で辞めない人材を採る方法77』
単行本:224ページ
出版社:株式会社プレジデント社
発行日:2018.5.31
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