オンボーディング Onboarding 「新卒社員」や「中途社員」が辞めない仕組みづくり
『オンボーディング』とは、新入社員をスムーズに社内に溶け込ませ、パフォーマンスを上げさせるための一連の仕組みづくりを言います。この冊子ではHR先進国であるアメリカ企業の事例も踏まえ、人材育成のための最新のメソッドを解説。
オンボーディングの具体的な取り組み方をご紹介しています。
人事異動・配置
公開日:2021.8.12
従業員の退職に悩んでいる会社は多いです。退職を防ぐことは、今や会社にとって重要課題です。そこで、従業員が辞めてしまう理由や兆候、対策について紹介します。
目次
そもそも、なぜ退職を食い止める必要があるのでしょう。その理由について解説します。
採用から育成、戦力育つ現在までの間には、多くのコストがかかっています。この人材コストが退職によってすべて無駄になってしまうのです。新しい従業員を雇うことになれば、再び同じぐらいの人材育成コストが必要になります。これは会社にとって大きな経済的損失といえます。
従業員が辞めると、現場に残ったメンバーにその分の負担がかかってしまいがち。これまで当たり前のようにできていたことがこなせなくなる可能性があります。求人を出して人材を募集しようと思っても、望んだとおりの人材をすぐに雇えるとは限りません。新しい人材を雇うのには時間とコストがかかるため、人員が減るのは会社にとって大問題です。
従業員が辞めると、周りの従業員の士気に大きな影響を与えます。会社に不満を抱いていた人は、自分もと考え始めるかもしれません。退職したメンバーが優秀な人だったならば現場の力が落ちてしまうため、会社の将来まで危うくなります。将来に不安を覚え、今のうちに辞めようかと考える人も出てくる可能性があります。
従業員が辞めると、その仕事を別の誰かが引き継ぐ必要があります。しかし、引き継ぎはそれほどスムーズにできることではありません。業務の整理をして、後任を決めて、細かな点まで引き継がなくては後々トラブルが起こってしまいます。さらに、後任が新しい仕事に慣れるまでに時間がかかり、ひょっとしたら機能しない期間が発生してしまうことも。引き継ぎには大きなリスクと負担が伴います。
どんなことが理由で従業員が辞めてしまうのか、予測できる理由をいくつかピックアップしてみました。
現在の待遇に不満を抱いている従業員は、辞めてしまう可能性が高いです。「自分の実力ならもっとお金をもらってもよいはずだ」と思い始めてしまうと、別の会社に転職して、より待遇のよい会社で働いたほうがお金を稼げる、今の待遇のまま働くのはもったいないことだと考えるのも自然でしょう。真剣に転職を検討するようになるのです。
自分に与えられている仕事の内容に不満を抱いていると、別の仕事をしたくなります。もっと自分の適正に合った面白い仕事を求めて転職を考える人は多いのではないでしょうか。
今の職場において人間関係に問題を抱え、転職を考える人もいます。疎外感や孤独を感じている、上司からパワハラやセクハラを受けている、同僚から無視されている、陰口をいわれているなどです。たとえ今の仕事内容や待遇に不満を抱いていなかったとしても、人間関係の問題は大きなストレスとなって耐えられなくなります。退職・転職をすれば現状のストレス環境から抜け出せると考えてしまうのです。
退職しそうな従業員にはさまざまな兆候が見られます。具体的にどういった兆候が表れるのかご紹介しましょう。
会社や仕事、上司などについて、愚痴や不平不満をこぼしている従業員がいるならば、会社に嫌気が差している状態。さらに平気で会社に関する悪口を発しているなら、もう会社に対する愛着がなく、会社のことを見限っている可能性が高いです。すでに転職についても検討していて、転職活動を始めているかもしれません。こういった従業員は動向を観察しましょう。
早退や遅刻の頻度が増えている従業員は、退職のために動いている可能性があります。会社説明会や面接、会社見学などのために会社を抜け出しているかもしれません。あるいは、会社で働くことが嫌になっていて、職場にいるだけでストレスになるため、会社を離れたいという気持ちから早退や遅刻といった行動に出ているケースもあります。いずれにしても、今までと比較して早退や遅刻が増えた従業員がいるならば、十分に注意するべきでしょう。
仕事をしていても目の前の業務に集中することができず、心ここにあらずの状態になっている従業員。これは、会社や仕事への関心が薄れていて、すでに退職の気持ちを固めている可能性があります。退職を決めてしまうと、一生懸命に仕事に取り組んだとしても特にメリットがないため、手を抜いたり、退職後に思いをはせていたりするケースが多いです。集中しておらずミスが増えた従業員がいたら要注意です。
従業員の退職を防ぐために会社としてできることはたくさんあります。退職を防ぐのに効果的な対策や注意点についてご紹介していきましょう。
何か不満や不安、悩みなどを抱えていて、それが爆発したために退職という行動に出ることがあります。その際、定期的に話をする機会を設け、従業員が心に抱えている問題を把握しておけば、早めに対応することができます。面談の実施などは大変有効なのです。
面談ではさりげなくいろいろな質問をして従業員の本心を引き出すことが大切です。直接尋ねても正直に答えてくれないケースがあるため、遠回しにいろいろな質問をして、悩みや不安がないか本心を探ってみるとよいでしょう。不満や悩みを特定できたら、できるだけ希望を叶えてあげられるよう改善案を提案してみましょう。そうすれば、退職の気持ちを抑えられるかもしれません。定期的に全従業員と面談をする仕組みが必要です。
待遇を改善すると従業員の満足度は上がり、退職を防ぐことができます。多少の不満点があったとしても、会社で働き続けようと考える人は多いはずです。ただし、待遇改善のためには、従業員全体の待遇をまとめて改善することが大切。一部の従業員の待遇のみを改善したのでは不公平感が出てしまい、逆に退職者が増える可能性があるので実施の際には注意しましょう。
今の部署における仕事や人間関係に不満を抱いている場合は、別の部署への異動を提案してみると問題が解決できることがあります。退職を考えている従業員から異動の希望が出されることはあまりないため、会社のほうから異動について提案するとよいでしょう。別の部署へ移るという選択肢を与えることで、退職の気持ちを改めてくれる可能性があります。時には実際に異動をしなくても、会社側の配慮によって本人の気持ちが楽になり、退職を回避できることもあるようです。
就業規則には会社におけるさまざまなルールが記載されており、当然、退職の手続きに関するルールも細かく記されています。就業規則がきちんと整っていないと、従業員が急に退職を申し出ても、引き止める余地がなくなってしまうことがあります。退職届は1カ月前までに提出などの細かなルールの存在が、退職の気持ちを抑えることもあるのです。
従業員の退職は、多くの会社を悩ませる重大な問題です。退職者が多いとそれにかかわる金銭的なコストや他の従業員の労力も発生してしまいます。退職の理由を探り、理解して、その兆候に気がついたらすぐに対処することが大切。ぜひこの記事を参考にして退職を防ぐための対策を考えましょう。
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