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慣れないコンサルティングに大苦戦…事務所を実験台にして新たな価値提供を実現 ~しくじり経営学~

右肩上がりの成長を続けてきた御堂筋税理士法人の代表、才木正之氏。
その陰には、コンサルティング業務での失敗や優秀な職員の退職など、さまざまな困難があった。そのとき何を思い、どう解決したのか話を聞いた。
※記事提供:月刊プロパートナー

二代目代表に就任し高い生産性を実現

御堂筋税理士法人は1991年、先代の小笠原士郎が大阪市で開業した個人事務所からのスタートでした。
私は新卒で入社して23年目の2017年に代表の職を譲り受け、今に至ります。
事務所としては、職員26名で一人当たりの年間売上1,800万円を達成するまでに成長してきました。

ここまで高い生産性を実現できた理由は、大きく分けて二つあると考えています。
一つ目は、教育に割く時間を惜しまなかったこと。弊社は税務・会計に加え、コンサルティングをサービスとして提供しています。事務所に蓄積されたノウハウが職員一人ひとりの財産になるよう、トレーニングを続けてきました。二つ目は、職員が一時間で生み出す粗利を徹底的に管理したこと。

「今からする仕事は何時間かかるのか」、そして「実際は何時間かかったのか」の振り返りを、上司と部下の間で必ず行うようにしています。
しかし、今日に至るまでは失敗もたくさんありました……。

事務所を実験台にしつつ、教育を強化

1994年に入社し、2004年ごろから経営計画の策定やその実行サポートなど、コンサルティング業務に携わるようになりました。コンサルティング業務への参入は、当時の代表だった小笠原の発案でした。
しかし、事務所に経験者がいなかったため、職員一人ひとりが自己流で進めていました。

当然ですが、最初は困難の連続です。
私には知識がなかったので、コンサルティングの本で学んだことを後ろ盾にしつつ、我流で対応していました。
なので、本に書かれていないことをお客様に聞かれると、答えられないんです。
結果として、お客様に不信感を抱かせてしまったり……。
また、毎月の業績検討会議を、目標達成に向けた「実行管理を徹底する場」に変革する『経営会議コンサルタント養成講座』のサービスも、当時は「成果が出ないから辞めるわ」と、打ち切られたこともありました。

そこで何をしたかというと、自分たちの組織を〝実験台〞にしながら、コンサルティングの内容を見直したのです。
経営計画は、お客様に提供している形で自社の分をつくり、『経営会議』も改善に改善を重ねました。
試して上手くいったことはそのままお客様に伝え、説明の仕方や資料のまとめ方で上手くいかなかった点も、正直に伝えていました。

また、現在は全業務時間の15%を教育・訓練・開発に使う、という独自の『15%ルール』に倣って、職員全員がコンサルティング業務に対応できる体制を目指し、ノウハウを共有する座学の研修や、お客様とのやり取りを想定したロールプレイングなどに時間を割ていいます。
1ヵ月の労働時間を160時間とすると、15%は24時間。多いと思われるかもしれませんが、良いサービスを提供しようと決めたら、これくらいは教育に充てるべきだと思います。
これらの取り組みで、今年3月にホワイト企業認定を受け、中小企業部門で『人材育成賞』を受賞しました。

案件を制限し、職員の疲弊を防ぐ

コンサルティング業務が軌道に乗ってきたタイミングで、集客に注力し始めました。
弊社のメインターゲットは「顧問税理士を変更したい」と考えているお客様。
なので、Webでの集客より、直接お会いして弊社の良さを伝えられる、セミナーを使った集客の方が効果的でした。
銀行と提携してセミナーを開催したり、事務所で無料の経営セミナーを開くなど、とにかく接触数を増やしました。

その結果、お客様は増えましたが、業務の多さに疲弊した職員が4名辞めてしまい……。
私を含む経営幹部は、セミナーでの集客が結果に結びつくことが嬉しくてそれに夢中になってしまい、職員が疲弊していることに気づけなかったのです。
「やりたいことができる事務所に移ります」と言われたときは、ショックでした。

そこで、職員を守るべく当時の代表だった小笠原と協議し、一人あたりの担当件数を、〝年一〞も含めて25件に制限しました。
それと同時に、新規開拓もセーブし始めました。
その中で、職員がチャレンジする場を設けてスキルアップを実現するため、企業と顧問契約を結ぶ場合のルールもつくりました。

中途と新卒それぞれ、ミスマッチ対策を実施

先代の小笠原から後継者として指名を受けたのは2013年のこと。それから4年の準備期間を経て、代表に就任しました。
就任後は、会計以外の領域にも対応できるような、チャレンジ精神溢れる優秀な人材を求めて、採用活動に力を入れてきました。

この3年間で14名が入社しましたが、うち7名が退職してしまいました。
その理由は中途の場合、「業務に物足りなさを感じる」、新卒は「風土に合わない」というものが多かったですね。
以前は中途の職員も、記帳などの基礎的な業務からスタートさせていたのですが、それを止めました。
入社当初から、本人の希望を聞いた上で、5つあるコンサルティングチームのいずれかに所属してもらい、常にチャレンジできる環境を用意しました。
また、新卒の場合は最低3ヵ月の長期インターンを採用フローに組み込みました。
現場を体験し、お互いを知ってからじゃないと、本当の相性はわからないと思うのです。

チームで若手を育てるソリューションファームへ

今までは個々のパワーアップが重視されるような、「個性派税理士コンサルタント集団」として活動してきました。
しかし、これからはチームの力で課題を解決する「ソリューションファーム」として組織づくりを進めていきます。
現在、若手職員は年に一度、自分が入りたいコンサルティングチームを選べる仕組み。そうして後進を育てることが、強い組織づくりにつながると考えています。

このように、若手が成長できる環境を整えたことが功を奏し、コンサルティング業務ができる職員は増加中です。
成果はまだまだですが、「チャレンジしてくれているな」と感じています。
最終的な目標は、弊社がお客様のすべての問題解決の窓口になることです。

前期は職員25名で3.8億円の売上ですが、2021年には30名で5億円、その5~6年後には50名で10億円の売上を達成したいと思っています。
そのためにも、弊社の強みであるコンサルティング業務を伸ばしていきたいですね。

理念を実践に落とし込みチャレンジを続ける

代表の職を引き継ぐ際、先代に「引き継ぐのは『お客様の成長・発展に貢献する』という理念だけで良い」と言われたので、今もその教えは忠実に守っています。
二代目として、小笠原が徹底してきた理念で引っ張っていく方が、理に叶っていると思っています。

承継準備の4年間は毎月90分、小笠原と一対一で面談をし、理念を実務に落とし込む術を指導してもらっていました。
厳しい指摘もあって当時は辛かったのですが、今思えばスムーズな承継のために必要な過程だったと感じています。
このメソッドは一般企業の承継にも適用できると思うので、成功事例として共有していきたいです。

そうして二代目に就任し、二年が経ちました。
今、経営者として大事にしているのは〝自彊息まず〞の精神です。
簡単に言うと、常に学び続けること
社会情勢や法令の読み込みを怠ると、お客様にホットな情報を届けられません。
結果として、税理士を乗り換えられることもあるでしょう。
なので、これからも勉強を続け、常にお客様の期待を超えていきたいです。

しくじり防止のポイント

1.準備・練習の時間をしっかり確保する

「会計事務所はもっと、業務の質を高めるために時間を割くべきだと思います」と才木氏。
社内、もしくは社外で研修を受けたり、ロールプレイングをするなど、サービスを提供するための準備を怠らないことが成功のコツ。

2.自社をコンサルティングし成功ノウハウを蓄積する

会計事務所自体の業績が良くないと、経営改善のコンサルティングをしても説得力がない。
まずは事務所を実験台にしてコンサルティングを行い、そのノウハウをお客様に提供するというフローが望ましい。


御堂筋税理士法人
創業/1991年
従業員数/26名
本社所在地/大阪府大阪市中央区今橋4-1-1 淀屋橋三井ビルディング4F


記事提供
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