人材育成は、企業が取り組むべき重要課題のひとつです。なかでも大切なのが、管理職や次世代リーダーといった、会社の未来を担う人材の育成でしょう。育成対象となる候補者は、どのように選べばいいのでしょうか?
早い段階からの選抜開始がメリットを生む
現在のビジネスシーンでは、人件費の抑制や組織改革によって、管理職ポストは減少傾向にあります。経営幹部も人数は限られているため、誰もでも彼でも出世候補になれるわけではないのが現状です。それゆえに“誰を育成対象に選ぶか”は非常に重要なタスクだと言えます。
育成対象者の選抜は、業界動向や企業理念を元に、求められるマネジャー像、リーダー像を明確にすることから始めます。そして、描き出した人物像に沿った評価基準を定め、候補の選抜にあたっていくのが妥当です。くれぐれも“勘頼み”に陥らないようにしてください。
社員個人の業績のみを選抜基準にすることも避けるべきです。ポテンシャル、意欲といった数字で測れない要素や、所属するチームで果たしている役割の重要性なども考慮し、選抜基準は多角的な視点で設定するようにしましょう。人材アセスメントによる客観的な評価を参考にしている会社も少なくありません。
候補者の選抜は、大人数からスタートして段階的に絞り込んでいくことで精度を高めることができます。段階を踏むには長い期間を要することになるため、早い時期から選抜に取りかかるのが得策です。時間をかけることによって、選ぶ側にも選ばれる側にも納得感が生まれやすく、後々の人事にも好影響が及びます。
また、早い段階からの取り組みによって見極めの機会が増えると、個々人の能力が明確になり、タレントマネジメントにつなげられるというメリットもあります。
数字で測れないパーソナリティを読み取る
候補者を選抜するうえでの基準として、業績や仕事ぶりに加えてパーソナリティの評価も重要になります。以下にその一例をご紹介します。
従業員のタイプを、会社の方針への順応性、業績水準のかけ合わせによって、
(1)方針に順応し業績が高い「突出タイプ」
(2)方針に順応するも業績はほどほどの「従順タイプ」
(3)独自のアプローチで業績を上げる「変革タイプ」
(4)独自のアプローチで業績もほどほどな「反抗タイプ」
に大別します。
(1)の「突出タイプ」と(3)の「変革タイプ」は、放っておいても積極的に仕事に取り組み、自ら成長していくタイプです。会社が抱える問題を自分のこととして捉え、他の従業員よりも結果を出せる行動力を持っているとも考えられるため、選抜社員にふさわしい存在だと言えるでしょう。
(2)の「従順タイプ」は、会社の方針を理解しながら着実に行動するタイプです。周囲と調和を取る能力に長け、従業員として大きな非はないものの、選抜候補としては伸び悩む傾向にあります。選抜社員として生き残るには、目標達成意欲や、周囲に影響を及ぼす意欲を高めることによるブレイクスルーが必要になります。
(4)の「反抗タイプ」は、業績を上げるまでにいたらないものの、独自のアプローチを試す独創性や反骨心を持っているタイプだと考えられます。ケースバイケースですが、あえて選抜社員グループの一員とすることで、意識が変わって大化けしたり、周囲に刺激を与える存在になる場合があります。
会社の方針に従順か、積極的か、もしくは独創的だったり反骨精神があるタイプなのかどうかは、仕事に取り組むプロセスを見極めます。さらに、業績は目標達成度やパフォーマンス結果から判断していきます。このような方法で、パーソナリティを割り出し、候補者を選抜するための一つの基準として採用していくと良いでしょう。
選ぶ側の“視点の違い”を考慮する
候補者の選抜方法にはさまざまなパターンがあります。
もっとも一般的なのは、所属部署の上司による推薦です。業績と仕事ぶりを考慮した選抜が可能なので、実態がともなうのが最大のメリットです。しかしながら、諸事情により一時的に低調ながらもポテンシャルが高い従業員が見落とされるリスクがあります。
また、優秀な従業員を現場に置いておきたい一心から上司が推薦をためらうケースや、部下とのコミュニケーションが上手くいってないことが原因で気後れするケースなどがあることは頭の片隅に置いておいてください。
人事部がデータを元に候補者を選ぶケースでは、感情抜きの冷静な判断を下すことができます。ただし、業績重視の選抜になった結果、ポテンシャルやパーソナリティが見落とされる可能性があります。
経営陣による選抜を行う会社もあるでしょう。管理職や次世代リーダーに求められる資質の何たるかを熟知した経営トップや幹部社員の視点は、他の選抜方法を超える説得力を帯びていると言えます。しかしながら、主観に陥りやすい点や、実務の様子を無視した選抜になってしまう可能性があることには留意が必要です。
自薦の場合は、やる気のある従業員を集められることが最大の利点です。しかしながら、自己評価が高すぎる従業員や、単なる研修好きが立候補してくることもあるでしょう。
まとめ
いずれのケースでも、メリットとデメリットがあるため、候補者選抜は慎重かつ多角的に行う必要があります。
選ばれた従業員のなかには「なぜ選ばれたのか」「これから何に挑戦するのか」と不安に思う人がいるかもしれません。会社側は、選抜理由や期待していることを丁寧に伝えると同時に、詳細説明や質疑応答によって、従業員が不安なく育成期間に入れるようにしていきましょう。
会社の現状や将来のビジョンに合った候補者選抜を行い、効率的かつ戦略的に人材を育成していってください。